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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

4大オケの4大シンフォニー2023

昨日行ってきた大阪のフェスティバルホールの演奏会のことを書いておきます。実は去年の年末に、このチケットを買って、期待していることを書きました。
その日のメニューは「4大オケの4大シンフォニー」と題したもので、今調べると毎年やっていて、もう9回目だそうですが、私が聴くのは初めて。WEBでも「ありえない!」とよく書かれているように、確かに普通にはないようなコンサートでした。
フェスティバルホール2023年4月15日
四つのオーケストラがそれぞれ一緒に同じコンサートをやるというのもそうですが、今回はブラームスの交響曲の全て(ちょうど4曲)を一気にやるということで、私も飛びついて買ったものの、けっこう大きな交響曲ばかりで、あとでこれは大変な内容ではないかと感じ、一気に聴くのに大量すぎて大丈夫かと心配したくらいでした。

演奏内容は番号順に書くと、最初となる3番をやるのが大阪交響楽団。次が私が期待していた4番で、センチュリー交響楽団。休憩後のはじまりが2番で、関西フィル。最後のトリになる1番を大フィルという順番でした。合計4時間ほどでしたが、疲れなどまったく感じさせず、飽きるどころかそれぞれに深い感動があって、私にとってもきっと記憶に残るだろうと思わせる、すばらしい演奏会でした。

感想を書くと、以前書いたように1番はもちろんですが3番、そして昨年の文章で知らないと書いた4番も昔聴いた覚えのある曲でした。おそらくほとんどが東京のレーモンド事務所にいたときによく行ったN響の定期演奏会でのことだったと思いますが、3番だけはもっともっとすごい演奏を聴いたことがあったと思いだしたので、ヨーロッパか米国のオケだったかもしれません。

まあ当時N響の定期で使っていたNHKホールは、音響のひどさが定評だったので、やはり今のフェスティバルホールの音はずっとすばらしく、それだけでも昔の記憶よりもよい音楽に聴こえたはずだとは思います。
センチュリー交響楽団 飯森範親氏202304
さて、最初の3番は編成が小さいこともあったのか、私にとってブラームスの曲としては、あまり期待したような内容ではありませんでした。でもチケットを買ったときから期待していた次の4番は、前半のトリなわけですが、演奏するセンチュリー交響楽団の音が、始まりから一気に吹きあがる感じがあって、ああこれだ!と思わせるようなしっかりした音楽になっていて、堪能することができました。

20分の休憩のあとが関西フィルで、指揮は飯守泰次郎氏。調べると病気で手術を受けたりされたようで、かなりよぼよぼされている感じで出てこられ、指揮台にも椅子が置かれていました。でも音楽が始まると、まずそのオケの音のすばらしさに本当にびっくりさせられました。関西フィルは、自分で買った以外にも、知り合いの方からのチケットが時々きて、シンフォニーホールなどで何回も聴いた覚えがありますが、あとでそれを思い出しても、こんなにすごい音の記憶はありませんでした。
関西フィル 飯守泰次郎氏202304
またその2番という曲は、最後まで聴いても以前に聴いた覚えがなかったように思います。全体に優しい感じの音楽で、自分の知っているブラームスの雰囲気とはかなり違い、もしもっと下手なオケだったら、自分は寝てしまうかましれないなと思いながらずっと聴いていました。

でも今回はそれどころか、強い緊張のなかでしっかりしたリズムを持ちながら、悠然という感じで続いていき、全体としての強い感動が、あっても心の中で深く沈みこまされるとでも言いたいような状況になって、4楽章の初めあたりでしたか、思わず涙ぐんでしまいました。本当にすばらしいとしか言いようのない音楽が最後まで流れて行き、演奏が終わってからは、私としては生まれて初めてのスタンディングオベーションというのをやってしまったくらいです。今日これを書いているのも、実はこのことを書きたかったからなのでした。
大阪フィルハーモニー202304
さて最後の1番の大フィルのことも書いておかねばなりません。指揮は尾高忠明氏。これも本当にすばらしいものでした。大阪で一番のオーケストラと言うのにふさわしい、完璧と言ってもいいようなすごい演奏で、指揮者自身が終わってから「何回もこの曲はやってきましたが、今日はその中でもかなりよかったと思います」とか話されたとおりの、実に生き生きとしてすばらしい内容だったと思います。
大フィル 尾高忠明氏202304
ただ、ですからまったく文句のつけようのないような演奏ではあったのですが、では昨日の演奏会のベストは?とあえて聞かれたら、やはりその前の飯守氏の関西フィルだったと思います。あれにはすばらしいとか、すごいとか、完璧とかというような褒め言葉をはるかに超える、一期一会の何かが確かにあったと思えるのです。

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2023年春分の日

先ほど事務所に、頼んでいた音楽CDの宅配が来ました。ヘルムート・ヴァルヒャさん演奏のバッハのオルガン作品全集。実は先週の21日火曜日のお彼岸は、私にとってもいろいろと盛りだくさんの一日でした。

まず午前中は、あの野球のWBCでメキシコとの準決勝戦。初めからテレビで見ていましたが、歩いて15分くらいの全慶院さんで、恒例の施餓鬼が午前11時半からの予約でした。試合はなかなか終わらず、8回裏で日本が1点負けたままで9回に入り、ついに仕方なく家を出ました。結果はみなさんご存じと思いますが、9回裏の大逆転サヨナラで日本が勝利。結果はお寺の受付で教えてもらった次第でした。

そして午後四時からは、これも比較的近方のいずみホールでバッハのオルガンコンサート。小雨なので電車に乗りましたが、ホールに設置されたパイプオルガンの演奏は冨田一樹氏。その最後が有名なパッサカリアで、レコードは持っていたもののもう30年以上も聴いていませんし、ちゃんとパンフを読んでいなかったので、前半の最後がそれかと思い、多少??こんなんだったっけ?と思いながらもすばらしい演奏だと感じながら聴いていました。もちろん後半が始まる前には自分の間違いに気づきましたが、その日のお目当てだった最後のパッサカリアは、やはりその音量も含め圧倒されるようなすばらしい音楽で、本当に堪能しました。

それで翌日、昔よく聴いていたヴァルヒャさんのパッサカリアのレコードを思い出し、WEBで調べてそれも入っているこのCDを買った次第です。その感想については、また年末恒例の総括で、できれば書いてみたいと思っています。

2023年の初詣

明けましておめでとうございます

本年がどうかよい年でありますように

2023長谷寺

さて今日書くのは初詣のこと。一日には近くの神社へ参りましたが、昨日の3日は、奈良の長谷寺へ行きました。近鉄電車などで近くはよく通りますが、私は30年以上前に一度行ったきりで、本当に久しぶりです。

実は去年もここに行きたいと思ったのですが、先に大神神社にお参りしたら時間が遅くなってしまい、あきらめたのでした。行きたかった理由は、一昨年に読み昨年末にも少し書いたイギリス人の女性旅行家イザベルさんの本に長谷寺のことが書かれていたからです。

彼女の関西への旅行は、神戸へ船で来て、京都でしばらく滞在したあと奈良市内を経て伊勢神宮へ行っているのですが、その途中、この長谷寺を訪れています。

彼女は日本の古い文化に対しては、それほど面白いとは思わなかったようで、その中でも建築では、かなり興味深く感じて書いていたのは、確か浅草寺とこの長谷寺くらいではなかったかと思います(日光はどうだったかは、ちょっと忘れました)。

まあそんなことで、私も昔に一度行ったきりで、どんなところだったか、あまり覚えていなかったので、これを機会にあらためて見てみたいと思ったのでした。
2023長谷寺の牡丹
([ここが牡丹でも有名とは聞いていましたが、この時期に咲く寒牡丹が見られるとは思っておらず、寒牡丹自体も見るのは初めてで、正月明けのちょっとした僥倖でした)

下の川筋から大和川の本流の脇を上り、さらに登楼の階段を通って本堂までたどり着くと、その前のテラス?から見える、広々と拡がる周りの豊かな山容の景色は、なかなか素晴らしいものでした。たしか彼女はさらに山を登って、上の方まで行っていた記憶があります。今地図で見る「まほろば湖」というのがありました。でもそこに今ある初瀬ダムは、当時はもちろんなかったと思いますから、おそらく単なる川筋だけだったでしょう。何を目当てに登って行ったか。

まあ私も1年半ほど前に読んだだけなので、彼女がこの場所でなにを書いていたのかはほとんど忘れています。再度読んでみたいと思いますので、何か面白いことでもあればまた書いてみます。

2022年末 その3

さていよいよ今年も最後の最後になりました。音楽のことも毎年書いていますが、今年はあまり書こうと思えるようなことは少なかったようです。事務所で聴くことが減って、自宅で聴いたりしたものの、少し耳が遠くなったようで、家人に迷惑がらたりして、CDをかける機会も少なくなり、今年はコンサートにも行きませんでした(まあその代わりに、近くに舞台のある能や文楽には何回か行きました)。

音楽で唯一書こうと思ったのは、モーツァルトの「フィガロの結婚」のこと。今回買ったCDは、昔レコードで聴いていたのとは違いますが、多分同じベーム指揮のベルリン。久しぶりに聴いてとてもよくて、蝶々の歌だっかアリアの一節が、イタリア語など知らないのに口に出てきてびっくりしました。

あとは今月になって、来年の春に大阪の4オーケストラのコンサートが大きく新聞広告出て、毎年やっているそうですが、来年はブラームスの4つの交響曲をやるというので、すぐにチケットを買いました。

実は以前ここにかきましたが、一昨年にブラームスの1番の交響曲をフェスティバルホールで聴いて非常に感動したことがありました。これは昔、大学を出て東京のレーモンド事務所に入ったときに深くお世話になった竹下さん(もう数年前に亡くなられましたが)が大好きな作曲家で、当時は私はあまり好きになれず、いつかはいいと思えるようなときが来るんだろうかと思ったりしていましたので、一昨年のコンサートを聴いて感動したことで、自分なりにはかなりの感慨があったのです。それからCDを買ったりもしましたが、4番はまだ聴く機会がなくて、来年のコンサートの広告を見て飛びついた次第です。まだ少し先ですが期待したいと思います。

さて今年の総括?はこれくらいにしたいと思います。

来年はコロナや戦争も明けて
久しぶりに晴れやかですばらしい一年となりますように


そしてまた、みなさまもどうかよいお年をお迎えください

2022年末 その2

昨日の続きで今年の読書について。

まずは去年の続きのような感じで、やはり明治の初めごろに日本にやって来た外人の本を見つけて読んだのが、エドワード・S・モースの「日本その日その日」。これもなかなか面白く読みましたが、去年のイザベル・バードさんは女性でイギリス人の旅行家。モースはアメリカ人の男性で考古学者。大森貝塚の発見者としても有名です。

男と女や仕事の違いはともかく、当時のイギリス人とアメリカ人の違いや日本に対する見方について、それぞれが鮮やかで、それらを比較しながら考えてみるだけでもとても面白く、今回は一気に読みました。

初めて来たのはモースの方が先で、明治10年。イザベルさんはその翌年でした。同じように最初に日光へ行き、あとで北海道のアイヌの部落も訪れています。北海道行きは、もしかするとほぼ同時期だったかもしれませんが、イザベルさんの雰囲気からすると、そうだとしても同じ白人でもアメリカ人にはわざわざ会おうとまではしなかったように思います。(**つづき)

さてそのモースの本を読んでから、彼によるもので私の仕事にも関係する「日本人の住まい」という本もあったので読もうと思いました。ただ訳者が異なる二種の本があって、迷いましたが比較的最近のものを買うことにしました。でもその訳者は建築のことはそれほど知らないようで、私としては少し読みにくくて、途中でおいてしまいました。図書館でそれ以前の1981年に出た本を借りてきて半分ほど読みましたが、これは私の大学時代の先生でもある上田篤先生たちの手になるもので、やはり読みやすくてこちらを買えばよかったとあとで思った次第です。

さてここまでは去年の続きでしたが、実は今年の読書で本当に書こうと思ったものは別にあって、次の本でした。宮部みゆきさんの「孤宿の人」。私は宮部さんの時代劇が好きで、以前から図書館にあればよく借りてきて読んでいます。夏頃でしたか、これも時代劇だと分かって借りて来ました。

まあ私にとっては軽い読み物のつもりでしたが、単行本で上下二冊組ですので、そんなに短くはないのですが、読み進むうちに、これは彼女の本ではいつものことですが、強く引き込まれてしまい、一気に最後まで読んでしまいました。

宮部さんの筆力のすごさは知っていますので、それだけならいつもの通りのはずでした。ところが最後のエピローグの部分になって、自分でも不思議に感じたほどですが、なぜか一気に涙腺が崩壊してしまいました。これはなぜかよく分からず、自分なりにもちょっと恥ずかしいと思えるような出来事でした。まあその理由などはうまく書けませんが、ざっとでも考えて思うのは、おおげさすぎるかもしれませんが、人間は生きて死ぬという、その当たり前の人生とは、つまりはこういうことなんだと、どこか腑に落ちるようなところがあったからだと思います。小説全体としては、ちょっとおおざっぱすぎると思えるようなところもありましたが、物語の一番最後に、「宝」が丘の上の「おあんさん」の墓に向かって走っていくときの文章や、その背景としてのはるかな瀬戸内海や街並みの景色は、心に深く刻まれました。

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