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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

改正建築基準法

改正建築基準法が先月20日に施行された。このところ業界のメールニュースなどでもその話題でかしましい。毎年少しずつ部分的な改正はされているが、今度のは姉歯事件がきっかけとなったもので、ほぼ全ての新築建物に義務づけられている確認申請の手続きが大きく変った。だからその影響は格段に大きいのだ。

姉歯事件は構造計算書の偽装という問題だったので、構造関係は変って当然だろうと思っていたが、それ以外の内容についてもチェック項目が大幅に増えた。国交省のページからチェックリストをダウンロードして目を通してみたが、わたしもちょっと唖然としてしまったくらい。また今まで使っていた民間の確認検査機構も手数料が一気に3倍以上にはね上がり、他では、様子をみようと一時休業したところまで出ている始末だ。

ただし、すでに構造計算を二重に検査するための第三者の構造チェック機関も作られたようだが、理想論だけで必要な人材がほとんど集まらず、当初のもくろみからはかなりトーンダウンしてしまったように、いずれ揺り戻しが来て、落ち着くべきところへ落ち着いていくのだとは思う。でもとりあえず目下の仕事はあるので、一瞬頭をかかえこんでしまったような次第。

まあこちらの場合は住宅で、構造も第三者機関のチェックまで必要になるようなものではないので、手間と書類量がかなり増えてもそう大したことではない。だが不特定多数が使用するマンションやビルなどでは、構造以外にも防火や耐火基準、避難規定など膨大なチェック項目について、その全てをいちいち表現してクリアしていかなければならず、この顛末は一体どうなっていくのだろうか興味しんしんというところだ。

ただし、姉歯氏のおかげで人間性悪説を前提としたような体制をめざしたのだとすれば、率直に言ってこれでもまだまだまったく甘いと言うほかないだろう。だからこれからは時間をかけて違う観点からの議論も始めていってほしいと願う。それはおそらく人間の「心」の問題で、当面の問題としては「倫理」や「倫理感」というところだろうが、そんなものは当てにならないと議論を避けてしまうような悪しき客観主義を脱することができないかぎり、慣習的倫理がほぼ滅びようとしているこの時代において、立法者たる資格はないのだろうと思う。

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