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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

大寒

寒中お見舞い申し上げます

昨日は大寒。暦通りに寒い日が続いている。年末まで暖かく、正月の気分じゃないなあと話していたら、大晦日からようやく少し冷え込んだ。今年はどんな暖冬かと思っていたが、年が明けてすっかり冬の風情になり、温暖化の話題でかまびすしい昨今、ちょっとほっとした気分もある。

ただ、事務所の入っているビルは築三十年以上になるだろうが、壁にはまったく断熱材が入っていない。もちろん暖房はあるので、エネルギーの無駄はともかくとしても空気温度は普通なみに上げられるが、今年はとくに足元が寒い。昨夏まで下の階におられた印刷工房が、ご主人がなくなって店をたたまれ、まだ空家のままだからと思う。昨冬までは、平日は下も暖房しているので寒さもそれほどでもなかった。

寒くなってから、事務所で仕事をしていてやたら疲れる感じがするのでなぜだろうと思っていたが、今日になってはっと思った。足先が冷たくて体力を消耗していたのだ。今日、昼に一度帰宅してこたつに入っていて、きっとそうだと気がついた次第。

まだまだ厳寒の折柄、皆様もどうかご自愛のほどを。

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リヒターのバッハ

明けましておめでとうございます

静かな正月の滑り出し。年賀状の返信を書きに事務所へ出てきた。まだ休みなのでまたCDをかけた。バッハの「音楽の捧げもの」。1993年のリヒター盤。

これを聴きながら、昔、リヒターのバッハが大好きだったころのことを思い出した。本当に骨格だけの音楽と言おうか、音楽のエッセンスが骨身にしみるような思いで聴いていた覚えがある。残念ながらほとんどはレコードで持っているだけなのでもはや聞くこともないが、二つの「受難曲」など箱入りのレコードもいくつかある。

その中でも自分にとっての一生の白眉と言っていいだろう曲と演奏は、「マタイ受難曲」の中の「イエスを返せ」にあふれ出るあのバイオリンのアルペジオだろうと思う。今になっても、もはやこれを書いてしまえば、もう音楽について書くことなんてほかに何があるだろうと思うほどのものだ。

これは、最初レコードで音楽だけを聴いていて、本当に美しいと思い、すごく好きになったのだが、しばらくは解説を読まなかった。よく覚えていないが多分「ヨハネ受難曲」を先に買って聴いていたからだろう。とにかくかなりあとになってから、ついている解説書(訳)を読んだのだった。そのときの驚きはとても口では言い表せない。しばらく呆然としてしまった記憶がある。それはそうだろう、あのような美しい極みの曲が、イエスを裏切ったそのユダの後悔の感情を表現し伴奏するような曲であったのだから。歌われているのはユダの「イエスを返せ」という痛切な叫び声だった。

ユダの「裏切り」がこの世で最大のものだったからには、その「後悔」も史上最大のものだったかもしれない。「善人なおもて往生す」という親鸞の言葉を思い知ったと書けば、あまりに唐突すぎるし陳腐かもしれないが、今でもまだその驚きが、そのまま口をあけているというのが正直なところなのだ。

次にベートーベンの「運命」をかけた。チェリビダッケのミュンヘンのもの。口直しと言っては怒られるが、このくらい強いものでないと「迎え酒」にもならないくらい高ぶったのも確かだ。まあ、たしか昨日の朝刊の「天声人語」で出てきたので聴きたいと思っていたのもある。この気分でその感想を書くのは失礼だと思うので、またの日に。

本年もよき年でありますよう