昨日、愛知県は犬山まで行ってきた。誘ってくれたマルフジ建築研究所の藤原君をはじめ総勢5人が近鉄鶴橋駅で朝8時に集合、近鉄特急に乗り込んだ。天候もよくて、榛原を過ぎたあたりの山中にはまだ満開の桜がたくさん残っていて、ある場所ではうす緑色の山の柔らかい新緑の中に、それらがあちこちに浮かび出て本当に夢のような光景だった。
名古屋で名鉄に乗り換え犬山遊園へ。ここで今日のもう一人のメンバーで作家(まだあまり有名でないが)のM君と落ち合う。藤原君の友人で岐阜に住んでいるとのこと。一枚目の写真は犬山遊園駅を降りて歩き出したばかりに撮った春の木曽川。春らしく少しかすみがかかった好天で、ゆったりした大きな水の流れを眺めていると、心までゆるやかに広がっていくような思いにつつまれた。
(追記:写真では動きがないので、「ゆったり」とか「ゆるやか」という感じが出ていないのが残念。それなりに考えて撮ったつもりなのだが、やっぱり腕なんだなと思った次第。)

旅の第一の目的は有名な茶室「如庵(じょあん)」を訪ねることだった。もちろん職業柄名前は知っていたが、茶室で国宝は三つしかなく、一つは利休の妙喜庵「待庵(たいあん)」で、あと大徳寺の「密庵(みったん)」席、そして残る一つがここで、そうか国宝であったと説明を聞いて思い出した。実は、誘われて話しにのったものの、正直あまり期待していなかったのだ。三つのうち「待庵」を訪ねたことがあるが、中には入れてもらえず外からのぞくだけだったので、ぜんぜん空間体験にはならず実物模計を見ているようなもので、いまだに「待庵」がすばらしいと言われても正直自分としてはまったくピンとこない。だから今回もそんなぐあいで、単に実物を目にするという程度にしか思っていなかった。
ところが、今回は予想に反して席に座ることができた。でその結果どうなったか、ちょっと大げさかもしれないが驚嘆したと言っていいだろう。今でもまだその余韻が十分残っている。その内容をひと言でいうとすると「光」だった。こんな茶室があるとは!と思った。茶室で感動するのは生まれて初めての経験だし、まったくなんでこんなことになるんやという感じで、書き出すときりがなくなりそうなのでやめるが、その興奮は今でも続いている。


上の二枚の写真は、外から眺めているときに中に誰もいなかったので、そっとカメラを差し込んで撮ったもの。本当はいけないのかもしれないが、もちろんフラッシュは使っておらず、おかげで少しブレてしまった。下は左が本体の正伝院書院で中央あたり緑のかげに「如庵」が見えている。名鉄資本の管理だからだろう、庭の状態もすばらしかった。さっきの興奮にあおられていて、行く前はあまり撮るつもりもなかったのに、植栽や敷石などの写真をとりまくった。

興奮さめやらぬまま「如庵」のある「有楽苑」を後にして、近くの犬山城で昼食後、次の目的地「明治村」へ。
タクシーを北口につけてもらってとりあえずライトの帝国ホテルへ。予算も潤沢にあったのだろう、密度も濃くて、さすがにすばらしかった。後輩たちがとくに感動していた様子だった。その正面の写真。

次は園内を走る京都市電。あたり一面新緑と満開の花の中、何やらなつかしいような景色で思わずシャッターを切った。あわてたのでちょっとブレてしまったのが残念。手前はハナモモか。奥はあちこちにたくさん咲いていたミツバツツジだろう。さすがにサクラは散っていた。

下は最後に行った森鴎外と夏目漱石が住んだという住宅の写真。昔の住まいが近代的に少し変わりつつような間取りで、それが面白く、また最近漱石を読んで感動したことがあったという事情もあり、皆が先に行ったあともわたしだけは残ってしばらく時間を忘れていた。
