fc2ブログ

松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

奈良の夕暮と紅葉

奈良の夕焼け
先週のはじめに奈良で撮った夕焼けの写真。その日に予定していた仕事の全ては終わらなかったが、暗くなってきたので切り上げて帰ることにした。敷地を出ると西に畑が広がっていてようやく気がついたが、西の空がすばらしい夕焼けになっていた。こんなに見事な夕焼けの景色を見るのは本当に何年ぶりだろうと話しながら、カメラを出してシャッターを切った。でも同時にフラッシュが光ったので、設定を変えてもう一枚撮ろうとしたが、そのときはすでにこの光芒の半分くらいは消えてしまっていた。

下にある次の写真は、非常勤で教えている帝塚山大学のアプローチ脇の広場に植わっているヤマザクラ。上と同じ日だが、順番が逆になってしまった。何とも見事な樹形と大きさのヤマザクラで、最初にこのキャンパスに来たときには本当に驚かされた。

さてサクラの紅葉は、年をとって紅葉をしみじみ眺めるようになってからとても好きになった。もちろん、鮮やかに一色に染まるモミジやイチョウのそれはそれで見事なものだが、サクラの紅葉はそういう類のものではない。赤から黄色にかけての豊かなグラディエーションがあり、それらが枝によってやわらかに違う。色も、鮮やかというよりは少しくすんでやさしく、よく言えばだが何とも繊細で日本的な感覚がある。この写真でも、一本で山の紅葉の全てを表現していると言いたいくらいに色調の豊富さがあって、本当にみごとだ。

大学の山桜の紅葉

スポンサーサイト



延暦寺と龍安寺

この前の連休、京都へ行ってきた。東京からの知人を案内してだが、今回訪れたのは延暦寺と龍安寺。

朝10時に京阪線の出町柳駅で落ち合い、京福電鉄からケーブルカーとロープウエイに乗り継いで比叡山の山頂へ。延暦寺は、学生時代に京都に住んでいたのにほとんど行った記憶がない。覚えているのは、まだたしか大学の一回生のときだが、合コン(言葉が古い)で、けっこうたくさんの男女の学生集団で比叡山に登ったことがある。女性陣は、ドレスを着てハイヒールを履いていたりで、けっこうおめかししていたので、ケーブルカーには乗ったはずだが、山登りも多くてちょっとかわいそうだったのを覚えている。でもそのときも延暦寺に行った記憶はなぜか残っていない。

まあだから初めてかもしれないが、行ってみると意外にも古いものが少ないのに驚いた。とくに自分の興味の対象である建築物にいたっては、江戸時代初期がもっとも古いものだから、関西にいて古代からのものさえ見慣れているので、ちょっと落胆させられた。思えばたしかに信長の焼き討ちというのは徹底的だったんだなと、あらためて思い知らされた次第。

下はそのうちでもっとも重要な根本中堂。やはり江戸初期のものだが国宝になっている。
延暦寺根本中堂

ちょっとは期待していた紅葉もやはりまだまだで、昼過ぎには山を降り、昼食をとってから知人のリクエストで龍安寺へ。戻った出町柳からだとバスでも不便なのでタクシーに乗ったが、1800円くらいで着いた。京都の東から西の端へという感じなので遠く思うが、やはり京都の街はコンパクトだ。ヒューマンスケールの町と言うべきか。下は山上で見つけた紅葉。
延暦寺の紅葉2008

龍安寺は、何回か来ているが、今まではどうしてかいつもおざなりな印象しか残っていない。あまりに有名すぎるからだろうか。たしかに人も多いし。でもここの有名な石庭は、たしか室町の終わりごろのものだが作者の名前は残っていない。すでに庭師でもきちんと人名が残るようになった時代だが、そういう有名な人たちでなかったというのがすばらしいと思う。これが大きな寺の庭であればそれなりに予算もあって、造りこんだ庭にもできたのだろうが、それに対してここは予算的には最小限で済んだのではないかと思う。だから無名な人でも腕をふるえたのだろうが、それでいてほかの大庭園をはるかに凌駕するような、最高に見事な「庭」を作ったというのが何とも言えないくらいに痛快に思う。
龍安寺2008

最後は流れていつもの先斗町のひろ作へ。その日の花は水仙だった。さすがに早い。冬に咲く貴重な花の一つ。ヨーロッパではギリシア神話のナルキッソスという美少年に由来を持つ花だ。彼はナルシストの語源にもなっている。

ただ調べるとこれも毒草。ニラと間違えて食べてあたる人がいるらしい。食べた部位によっては死んでしまった人もあるというから怖いものだ。ナルキッソスが死んだあとに咲いた花だというが、そういうのも神話の下敷きにあるのかもしれない。
ひろ作の水仙

西ノ京拾遺:ピラカンサ

薬師寺のピラカンサ
薬師寺の境内、南のはずれに植わっていたピラカンサ。秋の実の景色としては横綱格だろう。でもここは薬師寺の境内だから、近づいて、なんだピラカンサかと分かったときには、失礼だがちょっと落胆した。カタカナの名前はこの場所には似合わないと思ったからだ。今WEBで調べると和名でトキワサンザシというのもあって、これならどこかで聞いた覚えがあるが、わたしも木の名前として最初にはっきり覚えたのはピラカンサの方だ。いったいいつごろ日本で広まったものなんだろう?

ピラカンサというのもWEBではいっぱい出てきて、いくつか読んでみたがどちらが正しいのかよく分からなかった。学名からするとやはりピラカンサか。でも自分の好みで言うとピラカンサスの方がギリシア語風な感じがするし、据わりもよくて好ましいようには思う。

下はそれから十日以上たってから撮った写真だが、近くの三光神社の参道の階段脇に植わっていたもの。やっぱり見事なのでちょうど持っていたカメラで撮った。記憶では赤い実が多いが、黄色やオレンジもあるらしい。ただこの実には毒があるそうで、人間は見るだけにした方がよさそうだ。でもこんなに目だった実をつけるからには、やっぱり食べて種を運んでほしいからじゃないのかと思ったら、冬を越すと毒が弱くなるか消えてしまい、ヒヨドリなんかが喜んで食べているとどこかのページに書いてあった。とげのあることといい、けっこう周到な戦略を持った木のようだ。

三光神社のピラカンサ