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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

吉野山の植樹

彼岸の翌日の土曜日、吉野山へ植樹に行って来た。天候もよくて、すばらしい一日だった。ボースカウトでの活動だが、今回は地元の城南ロータリークラブが、創立40周年を迎えての記念事業の企画。今までいろいろお世話になって来ながら、初めて求められた支援だそうで、光栄でもあり、ここぞとばかり団をあげての参加となった。

だから最近はあまり顔を出されなくなった年配の方々も久々に参加されて、賑やかだった。全体は計150名ほどの大部隊で、上六から観光バス三台を連ね、うち一台がわれわれボーイスカウト隊の占有。朝8時集合で、一時間半ほどかけて着いた「下の千本」あたりの広場でバスを降りて開会式。そこからまた別の少し小さなバス(定期運行の普通のバス)に乗り換えて、奥の千本かあるいはさらにその奥あたりかと思える目的地まで、さらに30分ほどかかって移動した。
吉野山植樹-1
ここは標高850mくらいのところだそうで、はるか向うに見えているのは大峰山系。バスを降りてあらためて集合し、ヘルメットにアイゼン付の靴を履いた作業服姿の係りの方から作業内容の説明を受ける。植えるのはヤマザクラをはじめとする広葉樹。われわれが植えたのはクリノキと何とかザクラだった。上の集合場所から眺めると景色がよいのは分かったが、いざ降りようとしてちょっとたじろいだ。
吉野山植樹-2
説明で聞いてはいたが、本当にかなりの急斜面。こちらは小学生のカブ隊も連れて来ていて、一人の女の子は途中で足が動かなくなり、後ろがつかえているので、いったん脇によけてあとでゆっくり降りてきた。やはりボーイスカウトということで、ロータリーの方からいただいた「一番頼りに思っています」の言葉通り、行動も一番隊で、つまりは一番下での作業班だった。下の写真は降りる途中で撮ったものだが、この景色を眺めてしばし呆然となった。
吉野山植樹-3
とはいえ降りてからとにかく作業にとりかかる。子どもたちもいるので、わたしは最初は貴重な経験をしてもらおうと控えていた。鍬や金槌など道具の数は限られているし、年配の方々は、率先し張り切って作業に入られたので、まあ入る余地もあまりなかったわけだ。
吉野山植樹-4
最後はできあがった植樹の姿。仕事ではいつも見ている植樹作業だが、今回は急斜面ということの他に植えてから、雑草を防ぐ細かい編目のシートで周りの地面を被い、背丈ほどの長さの粗いメッシュの筒を上からかぶせるという、けっこう手間のかかる作業だった。筒状のメッシュは鹿などによる食害を防ぐためだそうだ。苗自体は50~80センチほどで枝もほとんどない小さく細いものだったが、斜面が急なので、穴を掘って埋めてから足で土を踏み固めるのがけっこう大変だった。
記念に渡された名前札(木の枝の輪切りで作ってある)は、バスの中で名前を書いておいたので、自分の記念にこの写真のに掛けてきた。いつか誰かが見ることもあるだろうか。
吉野山植樹-5

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春雨とジンチョウゲ

先日撮ったある住宅の玄関脇のジンチョウゲの写真。もう夕方近くで少し暗かったが、何とか写ってくれた。
ジンチョウゲ2009
小雨が降っていて、玄関前の石畳の花崗岩が濡れて美しい。実は何を隠そうここは私が設計した住宅。自分の住まいの近くなので、たまに前を通るのだが、できたのはもう七年と少し前のこと。だから植栽もその後少し変化はあるが、ほぼ分かる。入口の手前には二本、向こう側に一本のジンチョウゲ。手前の向こう側、中央のジンチョウゲは白花だが、これはとくに指定した記憶もなくよく覚えていない。三本同じではと植木屋さんが気を利かしてくれたのだろうか。向うのジンチョウゲの手前の草はキチジョウソウで、雨に濡れて一段と濃くなった緑色が美しい。奥の草はフイリヤブランで、その向こうにあるのは隣地際に植えたナンテン。

ここはめったに通らないが、近くのいつも通る道筋にも一本ジンチョウゲがあって、一週間くらい前に開花し、毎春のなつかしい香りが漂い、季節のうつろいを教えてくれた。このあたりは古い木造住宅の密集しているところで、道も狭く、道路際でもたいてい日当たりがよくないのだが、ジンチョウゲは元気。健気というか、わたしにとっては頼もしい存在で、仕事でも毎回必ずどこかに植えている。

しかしここのは本当に目を見張るくらい大きくなったと思う。昔、東京で勤めていたレーモンド事務所のビルの玄関脇にも植わっていたのを覚えているが、勤務して数年経ってもそんなに大きくなったような記憶がない。定期的に植木屋さんが手入れし剪定していたのだろう。ここは住宅だし、そんな形での手入れはしていないからかどうか、日当たりが悪いのにもめげず、丸々と、そしてのびのびと大きくなっているのはうれしい。

でもこのところ雨がよく降る。ジンチョウゲの花と春雨のやさしい風情につられて、蕪村の句を思い出したので最後に書いておこう。

春雨や
小磯の小貝
ぬるるほど