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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

富士見坂

東京行きの報告の続き。富士見坂の上から撮った写真を載せておこう。
富士見坂

ここは坂の頂部で、坂道はここで終わる。尾根?を南北に水平に走る小道に突き当たってT字の交差点になっているのだ。私は、JR西日暮里の駅から南に丘陵を登って、まず諏訪神社に参拝し、そのまま境内を南に出てすぐの、この交差点にやって来た。最初は気づかなくて通り過ぎようとしたが、数人の人たちが坂道の下の方を指差しながら立ち話をしているのが気にかかり、何だろうと立ち止まったのだった。脇に「富士見坂」という看板が立っているのを見つけ、ああ、ここがそうかと思った。JRの駅の周辺案内にも書いてあったのだ。「冬の晴れた日には富士山が見えます。都内で富士見坂という名の場所はいくつかありますが、今でも本当に見えるのはここだけです。」と言うような説明があったのを思い出した。まあまさかと思っていたので、その時はあまり気にもとめてはいなかった。

ただ目をこらしてみても、最初しばらくはよく分からなかった。でもしばらくしてどうやらあれが富士山かというのが徐々に見えてきて、見つめ続けていると間違いなく頂上が見えていると理解でき、それから一呼吸おいて、大きな感動に襲われた。今年の七月の苦労した登山のことが少しずつ体の底からよみがえって来て、そのまましばらくは茫然と眺めていた。

下は上の写真の部分拡大。多少画像を補正してある。でもこんなに大きく見えるとは思わなかったので本当にびっくりした。おそらく地上のビルなどと一緒に見えるので、一種の錯覚で余計に大きく感じるのだろう。
富士見坂の富士山

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東京へ

この連休、久しぶりに東京へ行って来た。単に遊びに行ったわけではなく仕事がらみだったが、予想をはるかに超えて、とても有意義な旅行だった。いろいろ書きたいことはあるが、このところ仕事がめっぽう忙しく、この連休をつぶしたので、週明けから仕事に追われてなかなか書いている余裕がない。

で、とりあえずメモだけでも。まあ今回はまったくの建築行脚だった。
一日は現在やっている仕事の参考にと、いくつかレーモンド時代の友人岸氏の建築を見て回った。他の用事も片付けて、最後の一日はまったくの自由時間。その日、印象に残った要点だけでも走り書きで書いておこう。

まず西日暮里でJRを降り、ぶらっと歩き出して富士見坂を通りかかると本当に富士山が見えたのにはびっくりした。この夏に苦闘しながら登ってきたばかりだったから、目にした瞬間、何と言ったらよいか、身体の芯がとろけそうになるような感動を味わった。杜甫の詩を思い出し「落葉の時節、また君に会う!」と叫びたいような気持ちになった。

そのあと池袋へ出て、岸氏が勧めてくれた立教大学へ。行くのは初めて。正門を入ると、奥にレンガ造りの古い校舎がとても大事に、そのままのたたずまいで丁寧に残されてある。白いペンキ塗りの木製サッシュも当初のままで、手入れにかけるこまやかな愛情が感じられて嬉しくなった。

さて、その後で行った最後の「自由学園」が本当に圧巻だった。行くまでは、正直に書くとあまり期待もしていなかった。同じフランクロイドライトの手になる国内の建築は、他にも、明治村に移された「帝国ホテル」や関西の芦屋にある「旧山邑(やまむら)邸」などがあるが、その両方を見ているものの、とくに後者は修復計画がまずかったのか、あまりよい印象がなかったからだ。

だから余計にそうなのかもしれないが、見た瞬間、大きな感動がやってきて、本当に釘付けになった。建築でこんなに感激するのはいつ以来のことだろう! コの字型の建物に暖かく抱えられ、そこにていねいに包まれている、あまりに見事でしかもどこかなつかしく、高貴とさえ言いたいくらいの、あの何ともすばらしい前庭の空間! そしてそれを作りあげている、ライト建築のスケール感とプロポーションにはまったくの脱帽だった。