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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

ハウジングアドバイザー2

昨日の続き。

さて、大阪市の「民間老朽住宅建替支援事業」にはいくつかのメニューがあるが、主な部分をごく大雑把に言ってしまうと、老朽化した建物(用途は問わない)「住宅」への建替に対して、補助金などによって奨励するというものだ。建替え後の用途が、基本的にだが住宅となっているのは、住宅以外の民間施設(事務所、店舗、工場など)だと、営利がからんでくるので補助金の対象にはなりにくいからだろうか。

補助金の種類としては大きく分けて三つある。

1.まずはもちろん、新築建物の設計や工事費に対して出るもの。
2.次に、その場所の現在の住民の家賃に対して出るもの(建替え後転出もOK)。
3.最後は、老朽化建物の解体(除却)費に対するもの。

この最後の3.は、それだけでも申請可能で、もし条件にはまればだが、その後の新築工事について、ほとんど条件はつかないから適用範囲は広い。さらに2.の家賃補助も合わせて使えるから、もっと活用されてもよいと思う制度だ。

ちなみにその条件というのは、現建物が「優先地区」内の「かなりの」老朽化「住宅」で、しかも幅員4メートル以下の道路に面しているというもの(優先地区についてはあとの説明を参照)。もしあてはまれば、ぜひ一度検討してみる価値はあると思う。

ただまあ、それぞれを具体的に見ていくとそれなりに条件は厳しいのだが、うまくはまれば、もちろん一部だがそれでもかなりの補助金が出る。

詳しくはここで書く余裕や必要もないと思うので、下記のアドレスに飛んで、概要をご覧ください。

大阪市民間老朽住宅建替支援事業(タテカエ・サポーティング21)

その中で、事業の典型的なターゲットとなるような老朽化住宅密集地を、市がいくつかピックアップして指定している。もっとも優先度、緊急性が高い「優先地区」と、レベルが少し下がる「アクションエリア」の二種類だが、下のページの左上にその概略の地図が載っている。すでに上でも少し触れたように、優先度が高い地区ほど、それなりの「特典?」がいろいろと用意されているわけだ。

パンフレットの1ページ

とりあえず事業の紹介だけで息が切れてしまった。本当は、こういう民間にまかせっきりの補助的なものではなくて、行政(立法)からのもっと積極的な取り組みが必要と考えるのだが、かなり話が大きくなってしまうのでそれについては措こう。また機会があれば書いてみたいと思います。

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大阪市ハウジングアドバイザー

先週の木曜日、大阪市のハウジングアドバイザーの仕事に行って来た。これは大阪市が「民間老朽住宅建替支援事業」というのをやっていて、その一環として毎月一回、民間の専門家が、午後の半日だけだが相談の窓口に詰めるというものだ。

場所は、中心部からは少しはずれるが、天六にある住まいの情報センター。私が詰めるのは、その4階にある「住情報センター」で、まあ市役所の支局みたいなところだからどうも名前が固いが、小さなライブラリーコーナーまであり、アットホームでゆったりとしたスペースに、いろんな相談カウンターや展示ブースが並んでいる。余談だが、この建物の8-9階の「住まいのミュージアム」には、常設で江戸時代の街並みが屋内に復元されていて、なかなか規模も大きく、一見の価値があると思う。

閑話休題。
職務はわれわれのような建築士と弁護士で、弁護士は第二木曜で建築士は第四木曜。ただ建築士は二人で分担で、一人あたり年に六回の出勤となる。私は、毎週木曜日は午前中、帝塚山大学に出講しているので、今回が初めてだったが、午後一時からという時刻にぎりぎり滑り込みセーフ、昼食をとっている余裕もなかった。まあ講義は前期だけだし、年度後半の回数を増やしてもらったので、こういうあわただしいのはあと一回(7月)だけだが。

さて、ここでその事業について、紹介も含め少し書いてみたい。

大阪市だけではなくて古い都市となると、みな大なり小なり、老朽化した木造住宅密集地の問題を抱えこんでいる。戦前からのような古い街並みは、伝統的な雰囲気もありそれ自体悪くはないが、やはり時間がたつと人も高齢化し入れ替わっていく。でも一部の地域では住み替えや建替えもあまり進まないままに手入れが行き届かなくなってどんどん老朽化し、昔の地割だから敷地や道路も狭く、消防活動もやりにくいような状況のまま、都心のあちこちに取り残されている。

戦前と書いたが、大阪市のように空襲で中心部一帯が焼き払われたようなところでは、きちんとした都市計画もないまま戦災復興の需要で戦後、長屋の木造住宅が周辺部にどんどん建ち並び、それらもまもなく築70年を迎えようとしている。在来の木造工法ではそろそろ限界と言っていいだろう。

さらに日本では阪神大震災から先の東北大震災と、超大規模の地震が続いて起こり、次は表日本の太平洋沖地震だと都市の地震対策が一気にクローズアップされて、最近はマスコミもけたたましい。だからつい最近のニュースでは、大阪府がこういう対策のために今年度から予算を大幅に増額して、市町村の事業をバックアップするということにもなってきている。

ここで書くのは大阪市の事業だが、もちろん府下の市町村をはじめ、全国の自治体でも同じような事業はたくさんあるだろうと思う。長くなったので、事業の詳しいことはまた明日。

菩提樹

シナノキの街路樹-1

上は非常勤講師を勤めている奈良の帝塚山大学にある並木の写真。

キャンパス中央部の「鳩の広場」に面して一段高いところにある通路脇の街路樹で、左手突き当たりにある図書館に向かう通路だが、広場を見晴らかす位置にある。樹種はシナノキだが、造園樹木としては珍しいと思う。建築デザインに興味のある人なら、若手建築家の手がけた住宅などの内装で、シナベニヤという材料がよく使われているのをご存知かもしれないが、その材料となる樹木だ。

ちなみに私の担当している講義は「緑と空間デザイン」というタイトルで、造園植物の紹介を初めとして、庭園史などもからめながら建築家から見た造園デザインについてお話しする内容だが、その資料の一つとして、キャンパスの造園図面を毎年学生たちに配布している。実は私もその図面を見てこの街路樹がシナノキと知ったのだが、キャンパスの一番目立つ場所の並木としてどうしてこの木が選ばれたのかずっと不思議に思っていた。

シナノキは落葉樹で、紅葉はするがモミジやイチョウなどに比べれるとあまり鮮やかなものではない。樹形は悪くないが花も目立たず、つまりはあまり「華」のある木ではない。造園樹木としてはそれほど人気がないだろうと思う。だから不思議だったのだが、最近になってようやく腑に落ちるようになったので、書いておこうと思う。

シナノキの街路樹-2

このシナノキの近縁というか同じ仲間にセイヨウシナノキというのがある。ヨーロッパでは街路樹としても普通に見られるポピュラーな木だそうだ。ドイツ語では Lindenbaum と言う。この名を聞けばクラシック音楽を好きな人ならご存知だろうか。日本語では「菩提樹」となり、シューベルトの名高い歌曲集「冬の旅」の、その中でももっとも有名な曲の名前だ。

そして日本人なら連想はさらにそこから飛躍する。仏教の開祖お釈迦様が、この木の下で悟りを開かれてその名(菩提樹)があるということに。ただ残念ながらインドの気候は違いすぎるのでダイレクトにはつながらない。詳しくはウィキペディアにまかせよう。→ ボダイジュ

まあそういう思いの下でこの木がここで選ばれたのではないかと推測するが、そうであれば、大学のキャンパスのシンボルツリーとしてなかなかふさわしく、知ったときは少し胸が温まる思いもした。で、今日の講義でそんな話もしてきたのだが、どうやら最近の小中学校の音楽の授業ではこの曲はとりあげられていないようで、私たちの歌った唱歌の近藤朔風氏の詞を見せながら下の絶唱を聴かせても、知っている学生は皆無だった。とても残念に思った次第。

菩提樹 (歌唱 ヘルマン・プライ)