

山田太一氏の小説は、最近のマイブームの一つ。でもこの長編は今まで読んだ短編と比べてもダントツですばらしいものだった。読んだ直後の感慨が「何ともいえないほどなつかしい」という感じで、こんな感想をもったことは山田氏の著作以外もふくめ初めて。自分でも不思議な感じがした。
年配の方なら知っていると思うが、これはNHKの連続テレビ小説になった。脚本も山田氏で、小説がどこまで先行したのか知らないが、私も主演の真木洋子さんの顔とともに記憶に焼きついている。1972年なので、わたしは高1。ただ番組を見た覚えがないので、なつかしいわけもなく、またどうして彼女の顔がこんなに記憶になまなましいのか不思議だが、無意識に真木さんの大ファンだったのかもしれない。
ただもっと不思議なのは、舞台を和歌山の尾鷲だと思いこんでいたことだ。この本を読み始めて舞台が天草なのに驚き、山田氏がNHKの大阪放送局用に場所を変えたのかと思って読んでいたが、あとで調べてみるとぜんぜんそうではなかった。
たしかに尾鷲が舞台のドラマもあって「旅路」。日色ともゑさんが主演だが、「藍より青く」より五年も前の放送だ。わたしはまだ小学生のときになる。確かずっと放送は朝の8時15分からで、見ていると学校に遅刻するのは一緒なので、ほとんど見なかったはずだ。おまけに連続テレビ小説最後の白黒放送だそうで、女優の日色さんには覚えがあっても、まったく映像やドラマの記憶はない。
あと、まだ勤めていたときだから、もう20年ほど前のことになるが、尾鷲出身の女の子がアルバイトで来ていたことがあった。そのときも真木さんの顔とこのタイトルが頭に思い浮かんでなつかしい思いがした覚えがある。
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