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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

藤の花

巷はゴールデンウィーク突入のようだが、こちらは仕事が立てこんできていて、朝から事務所に出てきた。とりあえず一仕事を片付けてほっとしているところ。さっきの昼食のときにまた裏の公園を歩いて、今日は藤棚のところへ行ってみた。この前そろそろかと書いたが、何とすでにもう終わりかけだった。残念だったが、藤の花には自分にとってとても印象深い詩句がいくつかあるので、代わりにそれについて書いてみます。

まずは芭蕉の句。

草臥(くたび)れて 宿かるころや 藤の花

これはシンプルに藤の花を詠んだものとして、もっとも好きなもの。というか、自分にとっては俳句の中でもとびきりの句。さすがは芭蕉翁で、つまらぬ解説など不要か。


つづいては、正岡子規。

瓶(へい)にさす藤の花ぶさみじかければ たたみの上にとどかざりけり

不治の病でずっと寝たきりだった子規の歌。亡くなる前年のものだそうだ。見えやすいようにと畳の上に下ろされた花瓶を、水平な視線で寝床からじっと見つめている。これを思い出すといつも、病床の子規のあえぐようなやるせなさと悲しみの深さに貫かれて、本当に息がつまりそうになる。これは書くのがちょっと気恥ずかしいが、最後の「けり」の詠嘆の鋭さと深さは、自分にとってはたまらないくらいのものだ。しかし詠まれた内容だけとると何とも些細でつまらないような情景なのに、それがどうしてこんな感情を呼びおこすのか本当に不思議。

藤とは関係ないが、このまま終われないような気持ちなので、彼のをもう一つ。今度は俳句。たしか亡くなる直前に詠まれた7つのうちの一つ。でもさっきのが本来の意味での絶唱ではなくて、こういうものであったことを本当によかったと思う。おかしいかもしれないが彼に感謝したいような気持ち。

糸瓜(へちま)咲て 痰のつまりし 佛かな


最後は、坂本龍馬の歌。これは上の二つのような絶唱ではないかもしれないが、なぜか強く印象に残っている。

藤の花 今を盛りと咲きつれど 船いそがれて 見返りもせず

彼らしいさっそうとした歌だ。ただし彼は、それからも最後までずっと忙しく、そのまま去ってしまった。
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  コメント


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四季

ちょっと仕事が暇なのでブログにお邪魔しました。
松田さんのブログを拝見してると「四季」を感じさせてくれます。よくもまぁ~いろいろな植物に精通されてること、感心しきりです。しかもそれを繊細な文学的表現で格調高く文章にできるとは羨ましい限りです。これまでのブログを整理すれば素晴らしい本ができるのではないでしょうか。これからも楽しみにしています。それではまた。

大平 | URL | 2008年05月09日(Fri)12:00 [EDIT]


ようこそ

かなり大げさのようですがお褒めに預かり恐縮です。ちょっと気恥ずかしいですが、またたまには覗いて書き込んでいってくれればこちらも励みになります。でも引越し騒ぎからも落ち着いたようで何よりですね。ご家族もみなさんお元気でしょうか。こどもたちも博多弁に慣れたかな。でも気持ちにもかなり余裕が出てきたというか、まあ、ちょっとありすぎという気もしますが・・・。さすが大企業というところかしらね。

松田 | URL | 2008年05月09日(Fri)21:07 [EDIT]


藤棚

8年前にアパートのテニスコートが改装された際、管理組合の粋なはからいで、ベンチを置いていた場所に藤棚が作られました。
今回は、4月29日朝帰国、その足でテニスコートに駆けつけるとちょうど満開、日暮れまでテニスを楽しんだ後、「花見で一杯」でした。龍馬はそんな時間もなかったか?

徹ちゃん、同感。

新平 | URL | 2008年05月10日(Sat)07:16 [EDIT]