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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

ファンタジー

先週、先々週とちょっとあわただしい日々が続いたが、大きな仕事が一段落し、それぞれ別々の断片的なものが多かったので精神的には大分楽になった。ただ、夏ごろまでの長くハードな日々の疲れがどっと出てきた感じで、テンションはあまり上がらない。

読書の秋でもあり、たしかに最近は寝る前の読書が心地よい季節になった。でもこういう状況で堅い本や新しい読書には取り組む気にもなれず、昨日読み終えたのは久しぶりに図書館で借りてきた藤沢周平氏の「漆の実のみのる国」。彼は最近ちょっとしたブームの観もあるが、ふとしたきっかけから、そうなる2、3年前にある程度まとめて読んでみたことがあった。

そういえばもう10年以上前からなぜか江戸時代の小説を好んで読むようになっている。若いときの自分を思うと不思議な感じさえするくらい。ではなぜ好むようになったかと考えると、わたしにとっては多分上質のファンタジー(おとなの童話とでも訳すべきか)だからだと思う。

それをファンタジーの一種だと思うのは、一つには現代とは制度や社会の風景がまったくと言ってよいほど異なるから。それなのに、細かく具体的なことまでかなり正確に分かっていて、それを駆使して作家は、内容のイメージを比較的容易にくっきりと作りあげることができる。

イメージの豊かさや語り口は別として、現実とは世界がまったく異なり、しかもなおその構成が明確かつ緻密であるということは、上質のファンタジーにとってなくてはならぬ大事なことだろう。だから作家が自分自身のイマジネーションのみでかなりの部分を作ってしまわなければならないような現代的なファンタジーと比べると、物語のできとしては、完成度や成熟度において数段勝っていてもあまり不思議はないということか。

まあただ、ファンタジーを好んで読むというのは「癒し」を求めているわけだろうが、それが江戸時代というのは・・・考えてみるとちょっと複雑な気分もあります。
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