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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

奈良の古建築-8:円成寺

あっという間に一週間以上たってしまった。円成寺からあらためて。
ここと次の長弓寺は、わたしだけの提案。じつは現在、仕事で寺院の設計に取り組んでいて、参考のために古い寺院の実測図などを見たり、古い木割書や古建築に関する書物を読みふけっている。その中で興味を引いた二つを入れたのだが、欲張って二つも入れてしまったのは大きな間違いだった。スケジュールがあまりにタイトになってしまい、それぞれを咀嚼してゆっくり味わう暇などなく、他の人たちには申し訳なかったと反省している。
円成寺-1
さて、円成寺は、あるつながりで参考になりそうな情報を得たので、一応アポイントまでとってたずねた。まあおかげで時間もそうずらすわけにはいかなかった。

ただ、やはりこういうあまりに伝統的な造形は、若くて建築設計を志している人たちにはピンとくるところが少なかったようだ。古建築に若い頃から興味があった私でさえ、古代のいくつかの傑作をのぞけば、近世の端正な書院や数奇屋ならついていけても、軒下に「組物(くみもの)」の詰まった折衷的「和様」の建築となると、残念ながら素直に向き合うのはなかなか難しいというのが正直なところ。強烈なスタイルの臭いが先に鼻についてしまい、そこにあるはずの芳しさまで容易にはたどりつけないのだ。

一番の見所と思う写真の本堂は、1466年に旧本堂と同じ規模と様式で再建されたという。もはや室町時代で、それも中期というか戦国時代の直前になる。この本堂を「寝殿造り」という記述がWEBに散見するが、昔(鎌倉初期?)のものと同じ様式で再建されたというのが本当ならば、古代の寝殿造り空間の雰囲気を今に残している貴重な例だと思う。
円成寺-2
上の写真で見てもわかるように、正面の軒の空間が全体スケールのわりにかなり低くて、用途は不明だが両脇にある一段高くなった「舞台」のたたずまいを見ても、寝殿造りという説明に素直にうなずけるところだ(ちなみに現在の京都御所になると、丈が高く、あまり平安時代の住宅という気分は感じられない。江戸初期の徳川権力の威を借りた武家書院の変種という方が適当だろうと思う)。
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