FC2ブログ

松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

奈良の古建築-10:円成寺-3

前回書いた春日造りで現存最古の国宝遺構は、春日堂・白山堂というペアのお堂で、間を一枚の壁でつながっている小さな社殿。まったく規模が違うが屋根の形式としては本堂と同じで、春日大社の奥院とも呼ばれたこの円成寺は、本堂さえも春日造りを参照して造ったということのようだ。

小舞仕立ての軒裏は、住宅(屋敷)起源と書いたが、もしかすると神社かもしれない。ただ多分日本での考案ではなくて、やはり外国からの移入だったろう。いずれにしても日本では仏教系ではないのは確かで、本堂の正面中央の突き出した庇部分(向拝(こうはい))は、仏堂標準の繁垂木になっているものの、両脇の軒裏の小舞の雰囲気もあいまって寝殿造りの面影を感じるのだろう。

ただ、ここまで書いてきて思うのは、昨日今日の記事は、屋根の形状がある程度分かっても、ほとんどの人がよく理解できなかっただろうということ。切妻型の屋根は日本人にとっては基本形で、もっとも重んじられる形だ。この屋根を持つ建物は、古代には「真屋(まや)」ということばで呼ばれたりした。だから伊勢神宮をはじめ、神社の屋根は基本的にこの形。春日造りももちろんそうで、妻入(つまいり:屋根の三角が見える方が正面)だが、その正面に向拝(庇)がつき、それが屋根と一体化してまるで入母屋型になっている。

ここまでなると、どうなっているのか、実はわたしだってよく分からないくらいなのだ。日本の伝統建築のことを調べていて、本当に驚いたことの一つは、屋根の造形に対する異常とまで言っていいくらいのマニアックなこだわり方だ。古建築に対して真正面から向き合うにつれて、古代から現代にいたる遥かに長い時間は、退屈な歴史でしかないのだろうと思っていたこれまでの予想をみごとにくつがえされた。ゆっくりではあるが切磋琢磨し、熟成し、静かな革新を続けてきたことがよく分かる。その感動や感想は、ある程度たまるくらいの量になってきたので、これまでのも含め、近いうちにブログの新たな「カテゴリー」としてまとめなおすつもり。まあゆっくり書いていきたいと思う。
スポンサーサイト

  コメント


管理者にだけコメントを閲覧させることができます