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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

奈良の古建築-16:霊山寺-2

霊山寺から話しがそれてしまった。
ここの本堂もやはり新和様建築の代表的な遺構の一つ。時代も規模もほぼ同じだが、長弓寺が桧皮葺(ひわだぶき)なのに対して霊山寺は本瓦(ほんがわら)葺。あと扉の仕様や細部の意匠もかなり異なる。長弓寺の方が再建東大寺に導入された新様式の天竺(大仏)様の影響が強く、斬新で派手な感じがする。対して霊山寺本堂の方は、より伝統的で落ち着いた感じと言ってよいだろう
霊山寺本堂外観
ただこういう知識は長弓寺から帰ってから本で読んだので、このあたりや、先に霊山寺を知っていれば、長弓寺へ行ったときの落胆の気持ちや違和感も、かなり異なったものになっていただろうと思う。

霊山寺は、長弓寺に行ってしばらくしてから一人でたずねた。建築当時の状況やその後の経緯はよく知らないが、今は霊山寺の方がはるかに盛況の様子だった。何より平群(へぐり)丘陵の山ふところに抱かれた緑豊かな境内のしっとりとしたたたずまいは、なかなかすばらしかった。樹木はモミジが多くて南都のお寺では珍しいような繊細で濃密な感じの雰囲気。ちょうどまだ新緑のあざやかな頃で、まるで京都のどこかのお寺の境内のようだと思ったくらい。
霊山寺境内

加えてふもとの入口付近には、有名なバラ園やレストラン、銭湯?温泉?まであり、まるで一山全体が伝統的なレジャーセンターみたいになっている。さっき長弓寺とくらべて「盛況」と書いたが、より正確には「繁盛(はんじょう)」と書くべきだったかもしれない。ただ遊園地なんかとくらべて決定的に違うのは、やはり背景というか基盤には、おごそかな宗教が在るというところだろう。信仰あつい年配の人々などにとっては、盛りだくさんによくできていて、心の底まで洗われる、非日常的な癒(いや)しの空間になっているんだろうなと感心したが、同時に奈良の歴史や宗教の分厚さを、あらためて強く感じさせられた。

余談が長くなった。次回は長弓寺の断面図へ戻ろう。
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