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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

省エネと住まい-2

さて最初に自分が「次世代省エネ基準」という言葉を知ったのは、ある住宅の施主の要望によってでしたが、振り返ってみると、それはもうまる7年前のことになります。同時に「高気密・高断熱」型の住宅という言葉もあって、ほとんど同じような内容だということもその時に知りました。まあ、そういう住宅の環境性能に関する具体的な知識となると、私自身は、それまでほとんど知らなかったと言っていいでしょう。「京都議定書」のことは新聞で読んではいましたが、現実には自分とはあまり関わりのないできごとだと思っていました。

余談をはさみますが、確かに巷(ちまた)で「建築家」と呼んでいただいているようなデザイナーの設計者は、こういう環境性能とかとなると、今でもそれほど関心は高くないようです。いわゆる「建築」にとって本質的な部分ではなく、エアコンなどの付帯的な「設備」で処理すべき問題だからというような認識でしょうか。まあ私も7年前までは、それほど変わらなかったわけです。

実際、二月にここに書いた「かんでん 住まいの設計コンテスト」の表彰式のあとであった作品発表の場でも、私が「次世代省エネ基準」という言葉を出したとたん、聞いている諸氏が全員一瞬引いたのを感じたくらいでした。自分自身、場違いなことに触れてしまったなと、少し後悔したのを覚えています。

さて現代の住宅における「省エネ」というのは、「高気密・高断熱」とほぼ同じ内容と上に書きましたが、簡単に言うと、住宅の外気に接する部分の気密性と断熱性を高めて、外界の熱環境から屋内を遮断してしまうことで、エネルギーロスを減らそうという考え方です。

もちろん目的が「省エネルギー」ということだけなら、他にも方法はいろいろあるかもしれません。例えば、和室を主体とした伝統的な日本の住まいは、気密どころかすばらしく開放的で、明治になってやってきた、石造やレンガ造になれた西洋人の目からするとバラックかウサギ小屋のようなものでした。断熱も、土で葺いた瓦や厚いカヤの屋根をのぞけば、ほとんどないに等しいと言ってよいような造りです。先に書いたやり方からすればまったく正反対ですが、ではエネルギー垂れ流しののぜいたくな暮らしをしていたかというと、そうではありません。

それは、徒然草(つれづれぐさ)にある「家の作りようは、夏をむねとすべし」という言葉どおり、エアコンのなかった時代に、耐え難い日本の夏の蒸し暑さをしのぐことを最優先した造りでした。もちろん冷房がなかったわけですから、夏はまったくエネルギーを使わなくてすんでいました。

ただしその反対の冬も、それなりに大変だったと思います。西欧なら、がんがん暖炉を燃やして、室温を十分に上げたいところでしょうが、もとよりすきま風だらけの造りですし、何よりつつましい日本人は、そんなことはしませんでした。まずはたくさん着込んで体温の消耗をできるだけ防ぎ、あとは火鉢やコタツという局所暖房だけでがんばって、総体としては非常に「省エネ」な暮らしをしていたわけです。ただし、多少の「やせがまん」と「精神力」を必要とする暮らしだったかもしれません。

徒然草に吉田兼好氏が書いたのは、当時ではおそらくかなり常識的な住まいに対する考え方で、彼がそう言ったからそうなったというようなものではありません。翻訳すれば、冬のことは二の次にしても当然というくらい、日本の夏は耐え難いものだということでしょう。
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