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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

由布院:無量塔

玉の湯と繁華街の喧騒をあとにして車で山道の坂を北上。といっても由布院の圏内だから10分弱のドライブ。WEBで調べた略図しかなかったので不安もあったが、無事、無量塔(むらた)に着いた。山の裾野を少し上がった高台の傾斜地で、背景に広葉樹の山の景色がひろがり、中心部からは外れているし、玉の湯とはかなり違う雰囲気で、広がりのある閑静なたたずまい。どんな所かよく頭に入っていなかったが、行ってみると予想をはるかに超えて、なかなか驚くべきところだった。

古民家を移築して改修し、ホテル(旅館?)として使っているとは聞いていたが、「民芸」というような世界とはまるでレベルが違っていた。外を歩いている間はそれほどでもなかったが、本館(?)の建物に入ってからそれを思い知らされた。

まあほとんどが泊り客のためのスペースで、敷地のはずれに多分新しくできた雑貨のショップがあり最初に入ったが、その奥の一段下がった暖炉のある小さなラウンジは、泊り客専用と立て札があり、そこからさらに奥に別棟で宿泊室があるようだった。ここも通路は内部ではなくて、屋根はあっても外部。外に出ると、向かいにこれも最近移築された大きな古民家があって、これも宿泊棟だった。

そこから坂を下って本館に向かう。ここには外来の客も入れるラウンジがある。やはり大きな古民家を改造したもので(あとで聞くと新潟から移築したそうで、見覚えのある特徴的な屋根窓があった)、ラウンジの場所をたずねると、小さなフロントの前を通ってさらに奥に入り、階段を二回ほど上がった奥のスペースまで案内された。
無量塔-3

入口は狭かったが、中はそこそこ広い空間で客はまばら。二箇所ほどの席を示されたが、ちょうどBGMにバッハのヴァイオリンソナタがかかっていて、端ではなく、部屋の中央部にある暖炉正面の席を選んだ。というのはその暖炉の上に本当に「お化け」のようなスピーカーがあって、見た瞬間から度肝をぬかれていたのだ。そして聴こえているのはなんともすばらしい音だった。

そこに座ると、もはや音楽はまったくBGMというようなものではない。目の前ほんの二メートルほどのところに、まがまがしいと言いたいくらいに不可思議な形をした巨大なスピーカーがあって、すごいような音が聴こえてくる。座ったソファ(布張りだがコルビュジェのもの)にしばりつけられ、「音」に対面させられているような感じ。とくに硬く乾いた高音がすばらしかった。
無量塔-2

こんな経験は初めて、いや違う、昔一度体験したことがあった。そのことはあとで書こう。

座ってコーヒーを飲んでいる間、あたりを見回していたが、表の建物とはまた別の、かなり巨大な古民家の骨組みの中にいることがわかった。上を見ると小屋組みの向こうに高く化粧屋根裏の頂部が見えていたが、何ともはるかな感じの心象として記憶に残っている。こんな思いを味あわせてくれるような空間はそうあるまいと思う。ただしこれは客観的な大きさとはまったく別の次元の話だ。
無量塔-1

ともかくそこでしばらくすごして帰るさい。入口付近にバーカウンターがあって、脇を見るとそこに巨大なターンテーブルが据わっていた。これも昔一度見たことがあるのと同じくらいの、どでかいもので、音源はやはりLPレコード。アナログのすばらしさをあらためて思い知らされた。

さらに、そのバーカウンター正面の上の壁に、まか不思議だが何ともいえないような迫力のある大きな木彫のレリーフがかかっていて、思わずこれは何ですかと聞いた。昔のイギリスの船(おそらく帆船か)にあった木製のキャビネットの一部で、本体はここ、酒瓶が照明に照らされて並んでいる下の台になっている家具で、その裏の化粧板をはずして上にかけているんですということだった。

まあ見たものはほぼ以上だが、自分にとってはもはやこのくらいで十分。四君子苑で、ある意味での洗練の極みと書いたが、これはまた別の意味でなかなかすごいところだと、あとでいろいろ考えさせられた。

玉の湯で近くにいた人が、無量塔は一泊5万円ほどするとしゃべっていたが(確かなことは知らない)、そのくらいなら、さもありなんという感じであった。

さっきスピーカーのところで書いた昔の体験は、長くなってしまったので次回にはさみます。また今度の大分の旅は本当に盛りだくさんで、これで終わりと思っていたらそうではなく、まだもう一つあった。
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