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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

姉歯建築士-4

では建築家の倫理とはということになるがその前に、正義という言葉が出たのでそれについて少し。

「真・善・美」という言葉がある。西洋の古典的な価値の三点セットと言ってよいだろう。ここに「正義」という言葉がないのが昔から不思議で、「真」の一種なのかと考えたりしたこともあるがやはり違うようで、人生の後半を使ってこれから考えてみたい事柄の一つだ。

ただ、正義が危ないのは身にしみて知っている。ヒットラーやスターリン、毛沢東の例を引くまでもなく歴史の落とし穴には必ずと言ってよいほどその猛毒がひそんでいる。「ほどほどの正義」などと言ったら正義感にあふれている人には叱られるだろうか。

さて本題の建築家の倫理だが、さきほどの三点セットを引けば「善」ということになるのだろうが、これは簡単に言ってしまえば、単に物事をよい方向に導いていくという意味にすぎない。ただ仕事の規模や範囲も含めてよく考えるとそれこそなかなか難しいことで、真も美も正義も一応含めなければならないし、いわゆる施主(建築家を雇う人)の立場から考えるだけでは済まず、各工事業者のことや近隣住民、さらには国土や環境のことまで関連することになる。もちろん自分のポリシーという個性もあるわけだ。

これら全体を考えて「善い」方向を見つけていかなければならないのだから複雑怪奇、価値の錯乱もしかるべしというところだろう。これはもはやほとんど「政治」の世界と言ってもよいと思う。

政治というといわゆる「政治家」の悪弊やスキャンダルであまり印象がよくないが、本来的には良識以上に高度の知恵や人生経験が要求される、人間にとっては最も高い位置にある職業(職業だとすればだが)だというのは間違いないだろうと思う。職業だとすればと書いたのは、人間であるかぎり一応は誰もが政治家でなくてはならないからだ。・・・続く
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