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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

日暮里富士見坂を守る会

昨日の続き。

「日暮里富士見坂を守る会」というのは、私も感動したあの富士見坂から見えている富士山を隠すことになる賃貸マンションと高層ビルの計画が現在あって、それに反対運動をしている会のようだ。設立は10年以上前なので、本当の守備範囲はもっと広いと思うが、それについてはあまりよく分からなかった。

かなり迷ったあげく考えた上で出した結論は、残念だがこの賛同のはがきを出すのは辞めておこうということだった。会の趣旨やそれに参加されている人々の気持ちは、それはそれとしてよく分かり、貴重な眺望を残したいという趣旨にはもちろん賛成だ。ただ自分自身、現在9階建ての共同住宅の設計をやっている立場からして、単純に心情的な賛同のみを安易に表明するというわけにはいかないと考えたからだ。

「日暮里富士見坂を守る会」が考えておられる趣意には、賛同こそすれ誰も反論するものはいないのは確かだろう。ただしそこには少数の利害関係者以外という前提がつく。

知らないでその土地を買って、それが「商売」のためで、法的な枠組みもないまま、当然建てて売れるべきマンションの大きさを縮めないといけないとすれば、正当な補償あるいはそれに見合うだけの損害(評判の悪化など)がないかぎり、とくに事業主体が、もし組織としてのディベロッパーなら(今回は両方そのようだが)、止めるべき目途は、なかなかないのではないかと思う。

これが組織の恐ろしさで、考える範囲が個人を超えて拡散してしまう。個人的利欲ならともかく、株主訴訟を恐がる社長や役員を非難することは、個人としての人間としては正当かもしれないが、事前にそれをしばるような法律などがないかぎり、命令はもちろん、罰することなどできない。もとより株式会社は営利の追求を主要な目的とする機関なのだ(そして営利の追及それ自体は当り前で、何ら悪いことではない)。

これは、知らないが、もし区が計画時に拘束力のない警告を出していたとしても同じようなことになると思う。この場合は「悪質」とは言えるかもしれないが、それだけに相手には、かえって確信犯の強さがあるということになるわけだろう。

必要とされるのは戦略、あるいは政治的な知恵や方策だと思う。上記のような利害の対立という場面で向き合ったときに、心情的な正論の訴えかけだけでは、ほとんど意味を持たない。事業主が個人か、かなりの力を持った社長で、しかも広範に物事を見渡せるような人物であれば、わたしだって確かに聞く耳を持っていただけると今でもそう思うが、それを一般化することなどはできない。

かなり厳しいことを書いてしまった。
でも会の趣旨には心情的に大いに同情するのは確かで、賛同者が増え運動としての盛り上がりに期待します。世論が動けば状況が動く可能性はあると思う。そしてこういう意思表明の活動や努力に対して、結果はどうあろうとも、また今回自分は立場上、単純な賛同表明はできないが、応援する気持ちは持っているつもりだ。だからブログを読んでわざわざ書状をいただいたことに対して、単に無視することになるのは申し訳なく、稚拙で走り書きでしかないですが、自分の考えを何とか少しだけでもまとめて書いたつもりです。もとよりこれだけでは会の長年の貴重な活動に対してあまりに簡単で本当に恐縮ですが、はがきでのご返事に代えて。
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