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松田靖弘のブログ

仕事とする建築のことや大学で教えている緑のことなどをはじめ、自分の日常の些細なことまで含めて気が向くままに書いていきます。

建築家山口文象氏-1

前に書いた「近代日本の作家たち」について、まああまり批評など書けるがらでもないが、建築家山口文象氏がとりあげられていてとても印象的だったので書いてみたい。黒田先生の視野の広さのおかげだが、よく取り上げてもらったと思った。

実は山口文象氏は、私の大学時代に一度京大で講演会をされてそれに行ったことがある。年譜を見ると亡くなられる少し前になる。すでに高齢でも語り口はいわゆる老人風のものではなかったが、やはり年輪を重ねた人の抑えた言い回しだったと記憶している。建築をかじりはじめたばかりの当時はどういう人かあまり知らなかったが、今となってみれば声を聞き顔を拝見できただけでも光栄だったと思う。

よんだのは、確か略称「関建連」という関西の大学の建築学科学生を対象とした組織だった。私も少し参加し、あとで分かってきたが民青系列に入る組織だったといってよいと思う。民青といっても今の若い人には分からないかもしれないし、まだあるのかもよく知らないが、共産党(京都はとくに強い)系の青年政治組織だ。

まあ多分今では共産党というと思想と組織が際立ちすぎ、それだけである色に染められてしまうかもしれない。でも少なくとも私の学生時代あたりまではその翼は左翼系リベラルという範疇においても大きな部分を覆っていたと思う。そしてそういう素地を共有している人として京大では西山卯三教授という巨人がいた。庶民の住まいに踏み込んでその具体像を詳細に調べあげ、その結果食う所と寝所は少なくとも分けねばという「食寝分離」論をはじめ、今のマンションでは当たり前の「n LDK」という表現提示にまでつながっていき、広い領域で大きな足跡を残された偉大な先生だ。

わたしは専門課程に入ってからはデザインを志向したので、西山研系列とは離れたが、今でもそのくびきのようなものは引きずっていると思う。戦災の荒廃も含め落ちてしまったどん底の貧しいところにいることで、かえって清新に獰猛なる「原日本人」の気力を奮い立たせていった思想的英雄の一人でもあっただろうか。

さて、今の若い人でマルクスの「資本論」を読もうと思う人はどれだけいるだろうか。まあわたしも2巻まで読んでやめてしまったので大したことを言う資格はないが、思想の是非はともかく、そういう景色が、今では専門をのぞく一般の若い人にまったく見えなくなってしまったようなのは残念なことだと思っている。マスコミでは「勝ち組 負け組」の議論がかまびすしいが、そういう人権と経済的な平等を叫ぶなら、その原点となった古典や、日本でもそれが力を持った時代の率直で真摯、素朴だがヒューマニズムにあふれていた言論に対してもう少し光があたってくれたらと思う。

さて資本論第3巻は1,2巻の思考をまとめてあるので3巻さえ読めば大体分かるということを解説書で読んでかえって3巻は読む気がしなくなったのだが、この1、2巻までの読書は私にとってはなかなかすさまじい経験だった。とにかく延々と当時のヨーロッパの貧民や低い地位におかれた労働者たちの悲惨な事例が、次から次へとこれでもかという感じで綴られていた。まあ、これは自分が当時少し特殊な状況にいたからこそ読めたわけで、そうでなければとても忍耐が続かなかったかもしれないと今では思う。あの建築空間としても有名な大英博物館図書室の円蓋の下で、マルクスは没頭してこんなことをひたすら探し、考えては書いていたのだと読みながら思ったりした。そしてそれはちょうどわたしが30歳の頃のことだった。

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書こうと思った山口文象氏のことからは完全に話しがそれてしまった。まあ順に書いていこうと思うとこうなってしまったわけで、本題は続きということに。
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  コメント


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社会主義の現場

当地、一応は世界でも残り少ない社会主義ですが、かつての民青の方々のように、社会主義(共産主義)の理念について話してくれた友人は皆無です。
ただし、社会主義的な組織?は生きております。まあ商売をしていると良くわかりますが、官僚=権益・怠惰 という図式になってしまうようです。
また概ね庶民は、食には困っていないが、近隣の産油国の豊かさを指をくわえながら見ています。時間的には豊かです。
最近は、石油関係の外資企業が多く参入しておりますが、みんな口を揃えて、「リビア人は使えない」と言っております。確かに、今厄介になっているオフィスの従業員も、「9時出勤で3時には仕事を終える」という仕事ぶりで、しかもその間もかなりの時間「お茶をのみだべって」おります。
これは、私自身が、怠惰に流れてしまうぐうたらな人間であるため、良く実感できますが、そういう立場となったなら、必ずやその恩恵を被っていると思います。
石油のおかげとはいえ、ある意味で理想郷です。

新平 | URL | 2006年03月15日(Wed)20:46 [EDIT]


ぐうたら

昔司馬遼太郎氏が、友人の外国人に、日本人より中国人が好きというのはなぜかときいたら、日本人はいつでも臨戦態勢で、中国人は駘蕩としてのんびりしているからだと答えたというようことを書いていた。もちろんまあ日本人にもいろいろいるわけだ。わたしも「理想郷」に行きたい。近ごろ出ることが多く今晩も出かけるのでまたここを書けず、スタッフの仕事姿を横目にこれを書いている。これはやはりサボっていることになるのかしら。

松田 | URL | 2006年03月17日(Fri)15:32 [EDIT]